太陽光の補助金は「売電するか(FIT)」で金額が変わる|神奈川の自家消費型補助を整理
2026-09-02 公式サイト確認・執筆
住宅に太陽光をつけるとき、多くの人が最初に考えるのは「余った電気を売れるらしい」ということだと思います。この売電の仕組みがFIT(固定価格買取制度)です。国が決めた価格で、決まった年数のあいだ電力会社に買い取ってもらえます。
ところが、補助金の世界ではここが分かれ道になります。神奈川県内の市の補助金を並べて見ると、「FITを使わず、発電した電気を自分の家で使う(自家消費)」ことを条件にした制度のほうが、補助額が何倍も高いという構図がはっきり出ています。同じ市の中に「売電する人向け」と「自家消費する人向け」の2つの制度があり、どちらか一方しか選べない、というケースまであります。
この記事では、どこがどう違うのか、なぜそうなっているのか、そして選ぶときに何を先に確認すべきかを、公式ページで確認した金額を使って整理します。
結論:金額の差は「7万円/kW」と「1〜2万円/kW」
先に答えから書きます。神奈川県内で目立つのは次の2つの型です。
- 自家消費型(FIT・FIPを使わない)…太陽光1kWあたり7万円が相場。ただし国の補助金とは併用できない制度が多い。
- 売電型(FITを使う)を含む一般の設置補助…太陽光1kWあたり1万〜5万円程度で、上限額も低め。そのかわり国・県の補助金と併用できる制度が多い。
4kWの太陽光で考えると、7万円/kWなら28万円、1万円/kW(上限5万円)なら5万円です。差はかなり大きく見えます。ただし後で書くとおり、この差だけで決めると損をすることがあります。
なぜ自家消費型だけ手厚いのか
自家消費型に7万円/kWを出している市の制度は、名前に「重点対策加速化事業」と入っていることが多くあります。これは市が独自に財布を用意しているというより、環境省の「地域脱炭素移行・再エネ推進交付金」を財源にして市が配っているお金です。国の交付金の趣旨が「地域で作った電気を地域で使う」ことにあるため、売電を前提にしたFITとは相性が悪く、条件から外されている、という関係になっています。
たとえば鎌倉市重点対策加速化事業費補助金の公式ページには、対象設備の条件として「固定価格買い取り制度(FIT)の認定又はFIP制度の認定を取得しないこと」「発電した電力量のうち30%以上を自家消費すること」と書かれています(2026-09-02に公式ページを確認)。同じ条件は三浦市、小田原市、逗子市、横須賀市、大和市の同種の制度にも共通しています。いずれも太陽光は7万円/kWです。
「30%以上を自家消費」という数字は、意外と重い条件です。大和市の制度では、この自家消費率30%を維持できなかった場合に補助金の返還を求められることがあると公式に示されています。日中ほとんど家に人がいない家庭で、蓄電池もEVもない、という場合は、この条件を満たしにくいことがあります。
同じ市に2つある場合:鎌倉市と藤沢市の例
いちばん分かりやすいのが鎌倉市です。鎌倉市には太陽光の補助が2本あり、条件が正反対になっています。
- 重点対策加速化事業費補助金…7万円/kW。FIT/FIP認定を取得しないことが条件。
- 住宅用再生可能エネルギー・省エネ機器等設置費補助金…1万円/kW(上限5万円)。こちらはFIT認定を受けるほうが対象。
そして市の公式ページには、この2つを併用することはできないと明記されています。つまり鎌倉市で太陽光をつける人は、「売電して5万円もらう」か「売電せず自家消費して7万円/kW(4kWなら28万円)もらう」かの二択を、工事を契約する前に決める必要があるということです。
なお2026年度の鎌倉市の重点対策加速化事業費補助金は、個人(家庭用)向けの受付が2026年6月17日で終了しています(2026-09-02に公式ページで確認)。現時点で鎌倉市の家庭が申請できるのは1万円/kWのほうだけ、という状態です。こういう「手厚いほうから先に埋まる」動きは、この分野ではよく起こります。
藤沢市も同じ構造で、住宅用太陽光発電システム(自家消費型)等設置費補助金が7万円/kW(自家消費率30%以上・太陽光+蓄電池+HEMSの同時設置が条件)、住宅用太陽光パネル等設置費補助金が1.5万円/kW(上限5万円)です。2026年度はどちらも受付を終えています。
川崎市は「同じ制度の中で」金額が分かれる
川崎市の太陽光発電設備等設置費補助金は、制度は1本ですが、中でFITを使うかどうかによって単価が分かれています。
- 太陽光(FIT非適用)…7万円/kW・上限28万円
- 太陽光(FIT適用)…定額4万円
- 蓄電池(FIT非適用の太陽光と連系)…10万円/kWh・上限70万円
- 蓄電池(FIT適用の既設太陽光と連系)…10万円/kWh・上限30万円
4kWで比べると、FITを使わない場合は28万円、FITを使う場合は4万円。24万円の差です。しかも蓄電池側の上限まで変わります。川崎市の制度は「国や神奈川県が実施する他の補助金と併用することができます」と公式ページに明記されている点でも、条件がよいほうに入ります。2026年9月2日時点の予算執行状況は全体の36%で、受付は継続中です(市公式ページ掲載の執行状況を2026-09-02に確認。原則毎週水曜更新)。
いちばんの落とし穴:国の補助金と併用できなくなる
ここが本題です。7万円/kWの自家消費型補助の多くには、「国の他の補助金の交付を受けていないこと」という条件が付いています。当サイトで交付要綱や公式ページを確認した範囲では、鎌倉市・三浦市・小田原市・横須賀市・大和市・藤沢市(自家消費型)がこれに当たります。
一方で、神奈川県の補助金とは併用できると書いている市が多いのも特徴です。大和市の公式ページには「申請する設備等が、国の他の負担金または補助金の交付を受けている場合、本補助金を交付できません。なお、神奈川県の補助金との併用は可能です」とはっきり書かれています(2026-08-24に確認)。
つまり判断はこうなります。
- 太陽光だけを入れるなら、国の住宅省エネ2026キャンペーンには太陽光そのものへの補助がないので、市の自家消費型補助を取っても失うものは基本的にありません。
- 同時に窓の断熱やエコキュートもやるなら要注意です。先進的窓リノベ2026や給湯省エネ2026を使うつもりなら、市の自家消費型補助の「国の補助を受けていないこと」に引っかからないか、対象が設備単位なのか工事全体なのかを、市の担当課に必ず確認してください。制度によって書き方が違います。
併用の基本的な考え方は補助金の「併用」入門に整理しています。
「加算」という形で自家消費を優遇する市もある
厚木市住宅省エネ設備導入促進奨励金は、基本分が太陽光1万円/kW(上限6万円)と控えめですが、そこに自家消費加算として1kWあたり7万円(上限42万円)が用意されています。加算の条件はやはり「発電した電気の30%以上をその住宅で消費すること」「FIT制度・FIP制度を活用しないこと」で、さらに太陽光・蓄電池について国の他の補助金を使った場合は自家消費加算が適用できないと示されています。
制度の形は違っても、「自家消費なら手厚く、そのかわり国の補助とは重ねない」という設計思想は共通していることが分かります。
売電(FIT)を選んだほうがよい場合もある
補助額だけを見ると自家消費型が有利ですが、次のような場合は売電型を選ぶ判断もあり得ます。当サイトは金額のシミュレーションは行いませんが、確認すべき論点として挙げておきます。
- 日中に家に人がいない…自家消費率30%の条件を満たしにくく、達成できないと返還を求められる制度があります。
- 蓄電池を入れない・入れられない…自家消費型の制度は蓄電池の同時設置を必須にしているものがあります(大和市・藤沢市の自家消費型など)。予算が届かない場合は選択肢から外れます。
- 国の補助金を同時に使いたい工事がある…窓・給湯器と同時にやるなら、国の補助と併用できる制度のほうが総額で上回る可能性があります。
- すでに手厚いほうの受付が終わっている…2026年度の鎌倉市・藤沢市のように、自家消費型が先に埋まることがあります。
確認する順番
- お住まいの市に太陽光の補助が何本あるかを見る(神奈川県の市町村一覧から確認日つきで見られます)。
- それぞれのFITの扱い(使ってよいか、使ってはいけないか)を読む。
- 2本ある場合、併用できるかどうかを読む。多くは「どちらか一方」です。
- 国の補助金を使う工事を同時にやるかどうかを決め、国補助との併用可否を読む。
- 受付状況(受付中/予算到達で終了)を確認し、契約や工事の前に申請する。ほとんどの制度は交付決定前に着工すると対象外になります。
県の制度もあわせて検討する場合は、令和8年度神奈川県住宅用太陽光発電・蓄電池導入費補助金は、2026年9月7日(月)に始めた第2期の受付が当日中に予算額到達で締め切られ、今年度の新規受付が終わりました(2026-09-07に県公式ページで確認)。設置の頼み先についてはリフォーム業者の選び方も参考にしてください。
よくある質問
Q. 自家消費型を選ぶと、余った電気はどうなりますか?
A. FITの認定を取らないだけで、余剰電力を売ること自体が禁じられているとは限りません。たとえば鎌倉市の制度は「発電した電力量のうち30%以上を自家消費すること」が条件で、残りの扱いまでは制限していません。ただし売る場合はFITの固定価格ではなく、電力会社との相対契約(買取価格は各社の設定)になります。具体的な買取条件は当サイトでは確認していません(未確認)。
Q. あとからFITに切り替えられますか?
A. 補助金の条件として「FIT/FIP認定を取得しないこと」と定められている以上、あとから認定を取ると条件違反になる可能性があります。処分制限期間(設備を勝手に処分・転用できない期間)を設けている制度もあります。切り替えを考えている場合は、申請前に市の担当課に確認してください。
Q. 自家消費率30%はどうやって証明するのですか?
A. 制度によって異なります。発電量・売電量が記録できる装置(HEMSやアプリを含む)の設置を条件にしている制度もあります。当サイトでは各市の証明方法の詳細までは確認していません(未確認)ので、申請前に交付要綱と手引をご確認ください。